沖縄の水環境について TOPIX4
■世界の先進例となる宮古島の地下水対策

 昭和63年('88)に持ち上がった地下水の硝酸性窒素汚染問題をきっかけとして、宮古では地下水水質保全対策協議会が結成され、島を挙げた地下水保全の取り組みが始まった。この取り組みの一環として、平成3年('91)日本地下水学会秋期講演会を宮古島に誘致して開催した。今回、10月24,25,26日、同学会が11年ぶりに宮古島で開催された。この機会に15年間の宮古における取り組みを振り返り、今後の課題について考えてみたい。
 宮古島のような琉球石灰岩の地域では、地表の雨水や排水が容易に地中に浸透するため、地表からの水質影響が他の地域に比べ短期間で地下水に現れる。県内石灰岩地域の金武町や宜野湾市、糸満市、平良市の一部において、湧水や井戸水を水源とする簡易水道の時代、赤痢の集団発生がよく起きた。これらの事例は、赤痢患者のふん便が地下に浸透して、その菌で汚染された地下水を井戸水や湧水として、近くに住む人達が口に入れたために生じた。上水道が普及した今日、これらの地域で赤痢の集団発生は起きていない。
 河川水や海水、地下水など、人畜のふん便による水質汚染指標には、大腸菌群数がよく用いられる。平良市西里の井戸では、晴れた日でも100個/ml以上の菌数が検出される。また、降雨の翌日には、アンモニア性窒素値の上昇とともに大腸菌群数が1,000〜10,000個/mlに達する。このことから、市街地においては、地下浸透で地表近くに留まっていた人のし尿や排水が降雨によってさらに深く浸透して、その翌日、生に近い水質で湧水や井戸水として現れ出ていることが解る。
 このような地下水のふん便汚染を防止する手だてとしては、宮古島全体で下水道や合併浄化槽を整備し、そして畜産廃棄物を有機肥料として畑に還元するサイクル(ゼロエミッション)を確立することにつきるといえる。とりわけ白川田水源地流域など、水道の水源地流域内では人のし尿と生活排水、そして畜産排水・廃棄物の対策が急を要すると考える。
 宮古島上水道企業団は、安全な水道原水を確保するため、平成10年('98)『宮古島水道水源保護条例』を制定して水源地流域の保全に力を入れている。
 平良市は市街地において単独下水道建設を進めており、現在供用(引き込み)可能な区域が86hr(全体計画比10.7%)、人口で6,300人(全体計画比20.7%)に達している。その郊外においては、久松(1,400人槽)、池間(379人)、宮島(133人)、高野(170人)の地区で集落下水道を整備してあるが、接続率が0〜27%と低迷している。
 下地町には、上地地区(1,170人槽:接続率62%)、与那覇地区(478人槽:接続率30%)に集落下水道があり、川満地区に採択済みの整備計画がある。城辺町には、加治道水源地流域に位置する比嘉地区(856人槽:接続率66%)の集落下水道があり、他に建設の計画を持っていない。
 このように宮古島では、地下水の硝酸性窒素汚染問題が持ち上がった昭和63年('88)以降この15年間に、単独下水道では建設のための財政負担、集落下水道では接続費用や下水道料金の経済的負担など、課題は多いがこれらの建設は着実に進められてきている。また、畜産廃棄物についても、肥料化に向けた取り組みが始まっており、畑に還元するサイクル(ゼロエミッション)の確立に向け動きだしている。
 今回の学会秋期講演会とシンポジウムの開催を契機として、窒素汚染と同時に起きているもう一方の地下水の消化器系細菌(ふん便)汚染について警鐘を鳴らすとともに、この汚染対策として一刻も早い下水道や合併浄化槽の整備、そして畜産廃棄物を有機肥料として畑に還元するサイクル(ゼロエミッション)の確立を呼びかける。
 宮古におけるこれらの取り組みは、世界の先進例として石灰岩地域における地下水の細菌(ふん便)汚染と硝酸性窒素汚染の対策モデルになることと思う。

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 図1. 宮古島の水理模式図
   (城辺町農業集落排水事業パンフレットより引用)



写真1. 地下ダム水位測定点
(福里地下ダムのダム壁と地下水の水位が見られる)

 

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